最近のARTについて思うこと
- 不妊症コラム
ART(生殖補助医療・体外受精)は、今までの医療では子供の授からなかった人に多くの福音をもたらせてきました。
高額であったARTの治療費も保険適用となり、より身近な治療となりました。そのためでしょうか、現在わが国ではARTによる出生児が全出生児の1割を超えています。
本来、ARTは不妊症に対して行う最終の治療であり、その治療には少なからず未解明な部分や問題も含まれていると言われています。
そうであっても少子化が叫ばれる中で、ただただ妊娠と分娩だけが最終目的となり、その問題はあまり取り上げられない傾向にあります。
ARTによる妊娠や出生について、今まで学会や文献で報告されたことは
①前置胎盤、前置血管、癒着胎盤、単一臍帯など胎盤と臍帯異常が多いことが発表されています。(ARTと胎盤・臍帯で検索してみてください)
②オーストラリアの大学の研究では出生した児の先天性の泌尿器・生殖器異常のリスクが上昇する
③ベルギーの大規模研究ではICSI(顕微授精)で出生した男児は将来不妊症になるリスクが高い
④台湾の研究ではARTで産まれた児はART以外の一般不妊で産まれた児より小児がんになるリスクが高い
等の報告がされています。
繰り返しますがARTは、今まで子供を授かる可能性の無かったカップルにも大きな幸せをもたらす画期的な治療です。そして不妊原因に対して、正しく適応されるべき最終的な治療なのです。
その上で大事なこととしては、ARTで妊娠した場合は胎児の状態のみならず、胎盤や臍帯などの丁寧で細かな妊婦健診が必要とされます。
また生まれた後では新生児、乳児、幼児にわたるまでの切れ目のない診察も重要であると思われます。
今後も結婚の高齢化、そのための卵子凍結などARTの需要は益々増えていくことが予想されます。少子化対策も大事なことでしょうが、何かが抜けながら進んでいると感じる昨今です…